弾性塗料の単層弾性仕上げと複層弾性仕上げ

外壁塗装で使われる塗料の中に、「弾性塗料」というものがあります。「弾性」とは力を加える事で形が変化するもののことです。弾力がある塗料ということですね。

モルタル壁は劣化が進むとクラックと呼ばれるヒビ割れが発生します。

弾性塗料は通常の塗料よりも柔らかく伸びますので、クラックが発生する可能性が低くなります。下塗りや中塗りの塗膜にヒビが入っても上塗り部分が伸びてクラックにならないこともあります。

弾性塗料は良いの悪いの?

一時期、ひび割れしない塗料として流行ったことがあります。しかし、弾性塗料は使い方を間違えると通常の塗料よりも耐久性が低くなります。

一昔前の知識で止まっている人は、弾性塗料は良いと言い、知識と経験がある人は弾性塗料は良くないと言うかもしれません。

正確には、弾性塗料が良い悪いというわけではなく、工法が間違っていると弾性性能を発揮できないということです。弾性塗料を使うこと自体は問題ありませんし、正しい使い方をすればクラックが予防できます。

弾性塗料は規定の希釈率だとドロドロした状態で塗りにくいため、作業性を高めるために規定よりも薄める業者があります。これでは弾性塗料の意味がありません。

注意しなければいけないのは、単層弾性仕上げです。塗膜を厚くすることで効果を発揮しますので、弾性塗料を水で薄めて薄く塗られてしまうと効果を発揮しないばかりか、通常の塗料よりも耐久性が下がります。

弾性塗料の仕上げ方

20度で伸び率120%以上の塗料を「弾性塗料」と呼び、弾性塗料は複層弾性仕上げと単層弾性仕上げに分かれます。「微弾性塗料」には明確な基準がありません。

弾性塗料の種類 特徴
単層弾性仕上げ 厚く塗ることでヒビ割れに強い塗料。下塗り1回、上塗り2回が標準。薄めて使う悪質な業者もある。
複層弾性仕上げ ヒビ割れに強い最も効果が期待できる塗装。下塗り1回、中塗り2回、上塗り2回が標準。
微弾性塗材 シーラーの代わりに使用する下塗り材。微弾性下塗り1回、上塗り2回が標準。

単層弾性仕上げは、中塗りと上塗りで同じ塗料を使いますが、複層弾性仕上げは異なる塗料を使います。複層弾性仕上げは、中塗りで高いクラック追従性能を付与し、上塗りでは耐候性や美粧性がある塗料を使います。

おすすめできるのは複層弾性仕上げですが、作業工程が多くなりますので工事代金が高くなります。

弾性塗料の種類

商品 種類 特徴
DANシリコンセラ
(日本ペイント)
シリコン 水性 セラミック変性シリコン樹脂配合の単層弾性塗料。耐汚染性、耐候性、防水効果に優れている。
弾性ビニロック
アクリルシリコン
(ロックペイント)
シリコン 水性 シリコン樹脂配合の単層弾性塗料。シロキサンによる高耐候性が特徴。クラック追従性・防水効果あり。
セラミクリーン
(エスケー化研)
シリコン 水性 弾性セラミックシリコン樹脂配合の単層弾性塗料。低汚染・高耐久性に優れている。
シリコンテックス
(関西ペイント)
シリコン 水性 水性アクリルシリコン樹脂配合の単層弾性塗料。速乾性・防カビ防藻性・透湿性に優れている。
セラビューレ
(スズカファイン)
シリコン 水性 セラミック配合の単層弾性塗料。クラック追従性・防水効果あり。
ダンディシリコンクリーン
(大日本塗料)
シリコン 水性 シリコン樹脂配合の単層弾性塗料。弾性性能が高く耐候性・耐汚染性に優れている。
ダンセイフッソ
(トウペ)
フッ素 油性 耐候性が極めて高い複層弾性塗料。耐水性・耐アルカリ性・耐薬品性あり。
DANエクセル中塗J
(日本ペイント)
アクリル 水性 アクリルゴムを主成分とした中塗り塗料。耐久性、防水性に優れている。

サイディングに弾性塗料は危険

サイディングに弾性塗料を使っているケースも見られますが、サイディングに弾性塗料を使うと、夏場などに塗膜が膨れ上がる可能性があります。

サイディングボードには、断熱材が貼っており、太陽光を浴びて温度が上昇すると、塗膜に熱が溜まりぷっくりと膨らむことがあります。弾性塗料の場合、粘りと厚みがあるため、このような症状が出てきます。

優良業者であれば、サイディングで弾性塗料を勧めてくることはないと思いますが、弾性塗料を希望する場合は注意しましょう。